6day. 生活

 起床。
 使役魔に朝食を与える。
 (主人の場合使役魔に該当するのはコウモリやネコやウマ……一応スライムも入るらしい。使役の契約を結んだ動物や魔物のことだ。使い魔は魔術師の血と肉から生まれるが、使役魔は魔術師と契約を結べば、どんなものでもなれる。理論だけなら植物でも可能だが、今の所、成功例は確認されていないという。使い魔と区別するために、彼らは使役魔と呼ばれる)
 朝食を作る。
 朝食を食べる。
 (この日は、フライパンで炙ったトーストと、黄身がぷるんとしたハムエッグと、レタスと人参のサラダだった。軽く焦がした目玉焼きをハムと一緒にトーストの上にのせて齧る。私も一欠もらったが、焦げ目がぱりぱりとしていて美味しかった。やっぱりパンやサラダよりはジューシーなハムの方が美味しく感じたが)
 朝食を片付ける。
 (食器を片付ける手伝いをした。爪の長い三本の指では運ぶことしかできない。人間のように五本指があればいいのだが。せめて親指が欲しい。親指というのは物を掴むのに適している)
 ウマにブラッシングする。
 (手伝えた。手にブラシを固定してもらい、主人とは反対側を梳いた。所々跳ねたところを直されたけれど、初めてにしては上手い、と褒めてもらう。次は直されないように梳く)
 仕事。
 (現在の仕事は医者からのものらしく、薬草や蛇の抜け殻や得体の知れない骨の粉などを混ぜていた。魔術師というのは薬師の役目もあるらしい。この時注意しなければいけないのは、主人に話しかけてはいけないということだ。集中している主人には声は届かないし、集中を途切れさせると失敗してしまう。私は呼ばれた時だけ物を取り、天秤を支え、場所を片付けていた。アシスタントのようなものだ)
 軽く昼食。
 (今日の昼食は朝の残りのパンを薄くスライスして、鳥のささ身と細切りのキュウリをマヨネーズであえた具を挟むサンドイッチ。ささ身を一口もらえた。やはりハムの方が好みだ。厚切りの)
 仕事。
 (仕事中、または研究中の主人は常時眉間に皺が寄っている)
 使役魔に夕食を与える。
 (この時間帯になると、スライム以外の使役魔がどこからともなく帰ってくる。一番手に入りにくいのがコウモリの餌らしい。聞くところによると、猟師からまじないや薬と交換しているとのこと)
 夕食を作る。
 (野菜を洗う手伝いを手伝った。ホワイトシチューにして作り置いておくつもりだったらしいが、私が野菜を半分ほど駄目にしてしまったために、量も半分になってしまった。失敗した餌はウマの餌箱に入った。野菜は牧草よりも高カロリーだから太るだろうと言っていた)
 夕食を食べる。
 (量が少なくなりつつも、ホワイトシチューは成功したようだった。とろりとスプーンから零れ落ちる白いソースが、人参やじゃがいもに絡む。一口わけてはもらえなかった。牙のある私の口は、スプーンでスープを飲むには向かないのだ)
 食後の休息。
 (この日はラースイースから借りた本を読み漁っていた。私は、勿論主人の足元だ)
 風呂。
 (今は何も言うまい)
 就寝前の一仕事。
 (メモをとったり、気付いた事を書きとめたり、明日の仕事のためだそうだ。主人の論では、夜は理性を鈍らせ慎重さを失わせるため、仕事をすべきではない、だそうだ)
 就寝。
 (私は主人の隣で寝ることを許された。ベッドの上に来るか、と誘われたがお断りした。私が寝るスペースは楽々あったけれども、爪で布団を破いてしまいそうだった。床がいい)

 主人は、とても規則正しい生活をしている。