冷たく揺らす風に溶けず舞う白。



隣の猫が一匹死んだ。



人懐っこくやんちゃで愛らしかったという茶虎の猫へ生きているうちに逢いたかったと願うも今は遅すぎ。

風に揺らぐ毛皮の一つ一つが固まりかけて硬直した前足を握っても温度と感傷はゼロに近い。

暖かい毛皮のうちに逢えたならば私の根本は揺らいだだろうかと仮定として考えるも懐かれた猫が死んでも何も思えなかった自分を思い出す。

随分と死という認識が遠く離れてしまった。


焦りにも似た手つきで他人のような指先が祝福である記事の隣に陣取る殺人事件の写真を載せた新聞を捲る。

酷く淀んで現実とかけ離れてしまった幻想にも似ている定義という刷り込みの沼に私は何かを落としてこなかったか。





雪が止めばいい。
猫が眠るには冷たすぎる。



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