けいと

ころころころ、
と転がった毛玉の先には毛糸が伸びていた。
くるくる、
と毛玉に巻けば毛糸は途中で切れていた。

これだけでは大きな毛玉にはなれないのだ。
指に伝わる熱の無い床の感触では不満足だ。
長いと思っていた糸は案外短かった。
近くにあると思った鋏は見えるけど手の届かないところにあるようで。

落ちていた毛糸の先と毛玉の先を結んで繋いだ。

巻くつもりだった毛糸は引かれる。
拳ほどだった毛玉はもう猫の目。
止める術は多分遠くに見える鋏で切ることか、
この力に逆らって千切るのを待つこと。

千切るにはもったいことこの上ない。



顔の見えない誰かが笑っている。

繋ぐということはそういうことなのだと。


遠くでまた誰かがこりずに毛糸を紡いで繋ぐ。



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